~times as 原級 as と ~times 比較級


bullet262   比較の回答


■~times as 原級 as と ~times 比較級


Q  
Shinさん

倍数表現は
(1)“X times as ~as ….”
で表すのが基本だと理解していますが、他方、
(2)“X times 比較級than ….”
という表現も学習参考書には載っています。

ところが文法書や参考書によっては(2)の表現は「倍数表現には用いない」という記述も見られます(例えば、安藤貞雄『現代英文法講義』(開拓社)、p.576)。

どのように考えればいいのでしょうか?

  
くぼたくさん

(2)の表現を見たことがなかったので、調べてみました。

Michael SwanのPractical English Usage Third Edition, p118に、次のような記述がありました。
日本語に訳すとだいたいこのような感じになります。

「X times as ~ as」は
「X times 比較級」で表すこともできる。
ただし、以下のようにtwiceとhalfの場合はas ~ asでなければならない。
She’s twice as lively as her sister.
*She’s twice livelier than her sister.

なぜこのようになるのかは申し訳ありませんが、私には分かりません。
倍数を表すのに「times as ~ as」の形が用いられる理由については私なりの答えがあるのですが、
比較級が後続する場合には当てはまりそうにありません。
もし何か分かれば、こちらに書かせていただきます。

  
Emanonさん 

Shin さん,

『英語語法大事典』のp.350-352 に大変参考になることが書いてあります。

一言でいえば,“X times 比較級than ….”は表現として曖昧・古い,ということのようです。

これは,安藤貞雄『現代英文法講義』の,

> 「X times 比較級than …」の構文は,普通,倍数表現には用いない
> で,次のような誇張表現で用いる」

という記述と一脈通じているような気がします。

詳しくは『語法大事典』を読んでみてください。

RE 
Shinさん

Emanonさま

ご紹介いただいた『英語語法大事典』のp.350-352 に目を通してみました。とても参考になりました。ただ何といってもやや古い記述であるところが気になります。もし、もう少し新しい資料が何かありましたらまたお教えいただけるとありがたいです。

RE 
Emanonさん 

Shin さん,

“The Cambridge Grammar of English Language” (2002年 p.1131) を見ると,

1) 「x times as 原級 as タイプ」→ “the more usual version”
2) 「x times 比較級 than タイプ」→ “the less usual (version)”

また,『語法大事典』にあるような「曖昧さ・古さ」については何の指摘もありませんでした。(この点は “A Comprehensive Grammar of the English Language (CGEL)” も同じです。)

それから,CGEL の,「比較」の章と無関係のところに:

> … nine times more massive than the sun.

という例文をみつけました。「x times 比較級 than タイプ」です。

また,1), 2) の頻度の差は実際どの程度なのかを具体的に知りたくて Rachel Carson の “Silent Spring (1962)” を調べてみると,

「x times as 原級 as タイプ」→ 10 件
「x times 比較級 than タイプ」→ 3 件

でした。ただし,後者の3件のうち2件は「many times …」という形ですが,前者はすべて「数値 times …」です。

一般的にこういう感じなのだろうかと思いつつ,”Rise and Fall of the Great Powers” (1987) もついでに調べると,

「x times as 原級 as タイプ」→ 11 件
「x times 比較級 than タイプ」→ 18 件

と,こちらは逆転しました。(多分これは例外的な事例なのでしょう。)

このような結果をみると,『現代英文法講義』の

> 「X times 比較級than …」の構文は,普通,倍数表現には用いない

という説明は,ちょっと行き過ぎかも知れません。

RE 
Shinさん

Emanonさま

「『現代英文法講義』の…説明は,ちょっと行き過ぎかも知れません」というコメントをいただきました。

2つのCGELのご紹介とともに、2つのサンプリング調査の結果が興味深く、いつものことですがありがたいです。

 


kogi5
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