「~さんのお宅ですか」 the Kato’s と言えるのか?
携帯サイト最強の英文法に寄せられた「英文法に関する質問と回答」を掲載します。
あなたの疑問解決に少しでもお役に立てれば幸いです。
Q:
細かな点ですが、ふと疑問に感じました。
ジーニアス和英の「お宅」で Hello, is this the Kato’s? という例文があります。
この Kato’s の後には house や esidence が省略されているものだと思いますが、この例文で the は必要なのでしょうか?
このままだと定冠詞と所有格の冠詞相当語を重ねて使っていることになってしまいます。
ユースプログレッシブ英和の residence には 『改まったときには This is the Smith residence.と答えることがある。ふつう This is Smith’s house.と言う。』とあります。
これを見ると最初の文は Is this Kato residence? か Is this Kato’s (house)? であるべきではないかと思いました。
もう1つ考えたのは、これは the Smiths(スミス一家、スミス夫妻)のような「the+姓の複数」の the なのかなということでした。
しかし、その場合であれば所有格は the Smiths’ になると思います。
いずれにせよ、私の考えでは最初の文は説明がつかないので疑問に感じています。
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A:
質問どうもです!
「~さん宅ですか」という質問は、正式には、Is this the Kato residence? と言います。
ただし residence は大きな家を意味するので、一部屋のアパートなどには大げさで皮肉に聞こえることもあるそうです。
いずれにせよこの residence を省略すると、省略したことを表すために the Kato’s と言います。
普通、定冠詞と所有格の冠詞相当語は重ねませんが、電話特有の例外として覚えておけばいいのではないかと思います。
加藤さんと直接話したいという気持ちがあれば、Is this Mr. Kato? でいいと思います。
なお、余談ですが、なぜ電話では「こちら」も「あちら」も this で表すのかというと、受話器を通して聞こえる音が自分のすぐ近くに聞こえるからだそうです。
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RE:
オッハーさんの,
> 省略したことを表すために the Kato’s と言います。
ですが,この形が可能というのは,どのように確認されましたでしょう。
私のさがした範囲では,(参考書類で)この表現がみつかりません。
『英語語法大事典』1のp.197,4のp.1262,CGEL などを見ても,「加藤宅」として考えられるのは次の3つです。
1) the Katos’
2) the Kato house (or residence etc.)
3) Kato’s house (or residence etc.)
* 1) の the Katos’ は「加藤家」の “the Katos” という名詞句の所有格です。(アポストロフィを省いて the Katos とすることもあるようですが,語法事典ではこれを勧めていません。)
* 3) の house は省略可能で,単に “Kato’s” とできるようですが,これだと自宅なのか店なのか曖昧になります(CGEL)。文脈がないと「店」などの意味に普通解釈されそうです。そういう意味では省略のない 3) の形が規範的だろうと思います。
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the Kato’s … という表現は,質問でご指摘のように,the と my を並べるのと同じ形をしていますので,文法的には明らかに不可です。語法事典の説明や文法の理屈からすると,この表現は誤り(誤植)のように思われるのですが…。
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RE:
語法大事典は調べていませんでした。利用価値の高い書籍であると改めて感じました。
ところで、私の持っているジーニアス和英は電子辞書に収録されている初版なのですが、第2版の「お宅」では Hello, is this the Kato’s? の例文はどうなっているのでしょうか。第2版をお持ちの方に教えていただきたいと思います。
ひょっとすると、これも編集部へ誤植の可能性を問い合わせすべき内容なのですかね。
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RE:
レスどうもです!
>この形が可能というのは,どのように確認されましたでしょう。
全く Emanon さんのおっしゃる通りです。
文法的には明らかに間違いであると私も考えました。
ただ、Google と Yahoo で「英会話」「お宅ですか」という語句で入力、検索をかけて色々な表現を調べると、Is this Kato’s? という表現が数例あったので、例外的に認められて用いられているものと判断しました。
誤植とは思われない程度にこの表現が紹介されていると考えたわけです。
いずれにせよ、私の説明には無理がありました。
申し訳ありませんでした。
やはり編集部へ誤植の可能性を問い合わせすべき内容なのでしょうか。
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RE:
Kato’s / the Katos’ という形の場所(建物etc)の表現を,英語では “local genitive” と呼ぶようです。“A Comprehensive Grammar of the English Language” (CGEL) でさがすと 5.125,”A Handbook of English Grammar” (Zandvoort) をみると 278 あたりからこれについていろいろ書いてありますが,これらを見ても,the Kato’s タイプはないようです。(the Katos’ タイプは例示されています。)
例外の可能性を考えなければならないので,なかなか断言は難しいのですが,調べれば調べるほど,the Kato’s は「不可」の可能性が高いと思えてきます。
しかし,いつまでも可能性レベルの話だけでは仕方ないでしょうから,ここはやはり編集部へ問い合わせてみて,最低限,誤植かどうかの確認をしてみてはいかがでしょうか。
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RE:
先ほど大修館書店へ問い合わせをしました。先に話題になったyenの複数形については、Shinさんはメールで問い合わせと回答のやり取りをされたようですが、私は大修館書店のホームページを見ても、問い合わせ先のアドレスが分からなかったので、最寄の営業所へ電話で問い合わせをしました。とりあえず口頭で疑問の箇所を伝え、内容の詳細はこの掲示板をご覧くださいと案内しました。回答が来るまでしばらくお待ち下さい。
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お待たせしました。編集部を通じて、編集委員の方からの丁寧な回答が届きました。以下に要点を記します。
「英文法質問用掲示板」における” Hello, is this theKato’s?”に関する質疑応答を拝見いたしました。
結論から申し上げると,ご指摘の通り,『『ジーニアス和英辞典』の見出し語「お宅」にある英文には誤植があります。同時に,現在の英語は最も一般的な表現ではありません。そこで,下記のように修正させていただきます。
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もしもし加藤さんのお宅ですか 《電話で》Hello, is this the Kato residence?
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この修正の理由は,ほぼ,おっしゃるとおりです。つまり,『英語語法大事典』(第4集)のp.1262にある解答などをまとめれば,電話で聞き手に「加藤宅」と言う時の表現は次の3つだと言えるでしょう。
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1) Kato’s (residence)
2) the Kato residence
3) the Katos’ (residence)
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次に,「ただし residence は大きな家を意味するので、一部屋のアパートなどには大げさで皮肉に聞こえることもあるそうです」というご指摘について申し上げます。
ご指摘の内容は全くその通りです。話し手が,聞き手が小さなアパートに住んでいると知っている場合に,話し手が,聞き手の住んでいるところをresidenceと言うことはふつうではありません。しかしながら,そもそもそのような場合は,話し手と聞き手は知り合いであることが多いので,residenceやhouseということばを使わずに,”May I speak with ~,please?”や,もっと《略式》には”Is ~ there?”などと言うでしょう(後者は映画やテレビドラマでよく耳にする言い方です)。
一方,話し手が相手がどのような場所に住んでいるかわからない場合はresidenceということばを使うのがふつうです。houseということばを使うことはふつうではありません。これはresidenceの一種の敬語的な使い方だと言えるでしょう。アメリカ人,カナダ人のインフォーマントともに,相手がどのような家に住んでいるか不明な時には”Hello,is this the Kato residence?”などと言うのが一番ふつうであることを指摘しました。またresidenceの代わりにhouseとは言わないと発言しています。
以上の考察から,「もしもし加藤さんのお宅ですか」にあたる英語としては”Hello, is this the Kato residence?”をあげるべきだと考えます。できるだけ早い時期に,修正したいと存じます。ご質問に感謝申し上げます。
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RE:
報告ありがとうございます!
わざわざお問い合わせしていただいたおかげで、非常に有益なことを知ることができました。
丁寧にお答えいただいた編集委員の方にも感謝です!
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